FX取引で使えるテクニカル分析のひとつに「ウォルフ波動」があります。名前だけ聞くと初心者には少し馴染みがないかもしれませんが、経験を積んだトレーダーの間では使っている人も多い手法です。このウォルフ波動を活用すれば、エントリーポイントや利確ポイントを見つけやすくなるのが大きな魅力です。
ただ、「エリオット波動」との違いなど、気になる点もあるかもしれません。
そこで今回は、ウォルフ波動とは何か、その見つけ方や具体的なトレードへの活かし方について分かりやすく解説していきます!
ウォルフ波動とは
ウォルフ波動は、米国の代表的な株価指数であるS&P500のトレードを長年行ってきたビル・ウォルフ(Bill Wolfe)氏とその息子ブライアン・ウォルフ(Brian Wolfe)氏が考案した理論です。
この理論は、物理学で知られるニュートンの第1法則「作用反作用の法則(すべての作用には反作用がある)」をもとにしているといわれています。そのため、「ウォルフウェーブ(Wolfe Waves)」とも呼ばれ、チャートの値動きを波のように捉えてその先を予測するのが特徴です。
ウォルフ波動は、明確な上昇や下落トレンドがある場面で使う「逆張り」の手法です。逆張りとは、価格が上昇トレンドのときに「売り」、下落トレンドでは「買い」をする取引方法のことを指します。
ウォルフ波動の特徴
ウォルフ波動は、有名な物理学者ニュートンの運動第3法則をヒントに作られた理論で、現在のトレンド方向とは逆方向に相場が動く可能性を予測する点が特徴です。この第3法則は「作用・反作用の法則」として知られ、物体に力(推進力)を加えると、同時に反発する力も発生する、というものです。

では、この法則がFX取引でどのように活用されているのか、具体例を挙げて解説します!
作用と反作用は、逆向きに働く:上がれば下がる、下がれば上がる
作用と反作用は、力が等しい:価格が動く幅は同程度
作用と反作用は、同じ線上に位置する:ラインが機能する
このように、相場に働く上昇と下落の力が均等であれば、その後の動きを予測しやすくなります。
とはいえ、相場は常に一定の動きをするわけではありません。上下の力が揃わない状況も多々あります。そんなときに役立つのがウォルフ波動です。ウォルフ波動は、予測可能なパターンを持つ相場を見極めるのが得意で、価格が上がっていれば下方向へ、下がっていれば上方向へと、逆張りの戦略を仕掛けるのが基本です。
エリオット波動との違い
FXには「エリオット波動」という似たような用語もありますが、初心者にはこの2つの違いが分かりづらく、うまく活用できないこともあるかもしれません。どちらも相場を分析するための手法ですが、「相場環境の認識の範囲」や「利益確定ポイントの有無」、「戦略の幅」などで違いがあります。
エリオット波動は、トレンドの全体的なサイクルを見るのが特徴で、単体ではエントリーの判断材料に使われにくい点が挙げられます。一方、ウォルフ波動は5波目を確認したあと、事前に決めた利益確定ポイントを目指してエントリーするという明確な手順があります。そのため、一般的にはウォルフ波動のほうが実践しやすいと感じるトレーダーも多いようです。
ウォルフ波動の見つけ方・引き方
ウォルフ波動がどんなものか理解しても、実際のチャートでどう見つけるのかが次の課題ですよね。ウォルフ波動を見つけるには、まず「トレンドライン」を正確に引けるようになることが重要です。トレンドラインとは、相場の方向性を分析するためにチャート上に引く線のことです。
とはいえ、初心者にとってトレンドラインを引くのは意外と難しいものです。そこで今回は、ウォルフ波動を見つけるためのポイントや、トレンドラインの基本的な引き方について分かりやすく解説していきます!
チャートからトレンド相場を探す
ウォルフ波動を見つける前に、まず現在の相場が「トレンド相場」なのか「レンジ相場」なのかを判断する必要があります。トレンド相場とは、価格が一方向に動いている状態のことを指し、一方、レンジ相場とは、価格が一定の範囲内で上下を繰り返す状態のことです。
ウォルフ波動はトレンド相場から特定のチャートパターンを見つける手法なので、まず現在の相場がトレンドであるかを確認し、さらにそれが上昇トレンドか下降トレンドかを見極めます。
以下に、トレンドごとの高値と安値の特徴をまとめた表をご紹介します。これを活用すれば、トレンドの判定がしやすくなります。
トレンドの種類 | 特徴 |
---|---|
上昇トレンドの場合 | 高値と安値が切り上がっている |
下降トレンドの場合 | 高値と安値が切り下がっている |
レンジ相場の場合 | どちらにも該当しない |
トレンド相場から「三角持合い」を探す
ウォルフ波動を見つけるためには、トレンド相場から「三角持ち合い(ウェッジ)」を探すことが重要です。三角持ち合いとは、高値を結んだラインと安値を結んだラインが収束して三角形を形成する相場パターンのことです。
この形状は、価格が徐々に狭い範囲で動く状況を示しており、やがてどちらかに大きく動く(ブレイク)可能性を秘めています。
ウォルフ波動が現れそうな三角持ち合いを見つけたら、チャートにラインを引いて形を描き出します。これにより、どの位置が「ブレイクポイント」(価格が勢いを増して大きく動く可能性がある水準)になるかがはっきりします。この作業がウォルフ波動のトレードにおける第一歩となります。

三角持ち合い(ウェッジ)には、次のように相場の動きによって2つの種類があります:
- 強気の三角持ち合い(上昇ウェッジ)
高値と安値が徐々に切り上がる形状で、さらなる上昇が期待されます。 - 弱気の三角持ち合い(下降ウェッジ)
高値と安値が徐々に切り下がる形状で、さらなる下落が予想されます。
どちらの場合も、基本的にはトレンド転換のシグナルとして活用されますが、状況によってブレイク方向は異なるため、注意深く観察する必要があります。
三角持ち合いかどうかを判断するには、チャート上に積極的にラインを引いてみることが大切です。高値を結ぶラインと安値を結ぶラインが収束していれば、三角持ち合いの可能性が高くなります。これを練習することで、ウォルフ波動を発見する精度も向上します!
チャネルラインの角度を確認する
トレンド相場からウェッジを見つけた後は、実際にトレンドラインとチャネルラインを引いてみましょう。これらのラインは、相場の動きを把握するために非常に重要です。
- トレンドラインは、価格の高値や安値を結ぶことで、相場の方向性を示します。上昇トレンドでは安値を結び、下降トレンドでは高値を結びます。
- チャネルラインは、トレンドラインを基に、価格の上下の範囲を示すラインです。上昇トレンドであれば上のラインを、下降トレンドであれば下のラインを引くことで、価格がどの範囲内で動くかがわかります。
これらの2つのラインを組み合わせて使うことで、相場の方向性や強さをさらに正確に把握することができます。この2つを合わせて「アウトライン」と呼ぶこともあります。このラインを活用することで、ウォルフ波動をより効果的に見つけ、トレードの判断がしやすくなります。

ウォルフ波動を見つける兆候として、チャネルラインの角度が緩くなるという点に注目することが重要です。もしチャネルラインの角度が急でない場合、ウォルフ波動が発生する可能性が高くなります。一方で、チャネルラインの角度がきつい場合は、ウォルフ波動が形成される可能性は低いので、注意が必要です。
初心者の方におすすめなのは、たくさんトレンドラインとチャネルラインを引いてみることです。ウォルフ波動は未来の値動きを予測するための手法なので、トレンドラインを引くことで、パターンがどう形成されるかを観察できます。
最初は、まだ完成していないチャートでもトレンドラインを引いてパターンを探す練習をすると、徐々に感覚が身についていきます。
ウォルフ波動を利用したトレード
ウォルフ波動の基本的な知識を身につけても、実際のトレードでどのように活用すればよいかは初心者にとって難しいことが多いですよね。事前にしっかりとしたトレード手法を理解しておくことで、損失を抑える可能性が高まります。
そこで、ウォルフ波動を利用した具体的なトレード手法をお伝えします!この方法を実践することで、より効果的にウォルフ波動を活用し、エントリーポイントや利益確定ポイントを明確に見極めることができます。
ウォルフ波動のエントリーポイント
ウォルフ波動を利用したエントリーポイントの決め方についてです。
エントリーポイントとは、新しくポジションを取るタイミングを指しますが、ただライン上でエントリーを決めるのではなく、少し余裕を持った「ゾーン」を意識することが重要です。
ウォルフ波動では、このエントリーポイントの範囲を「スイートゾーン」と呼びます。このスイートゾーンは、ラインにぴったりと合わせるのではなく、その周辺の範囲内でエントリーを考えることをおすすめします。これにより、若干の価格の変動を考慮し、より確実にエントリーポイントを見極めることができます。
スイートゾーンを意識してチャートを分析することで、ウォルフ波動のパターンをより効果的に活用でき、リスクを減らしつつ利益を狙いやすくなります。

ウォルフ波動を利用したエントリーポイントの具体的な例についてご説明します。
- 上昇ウォルフ波動の場合
下降トレンド相場から三角持ち合いを探し、チャートにレジスタンスライン(高値を結んだライン)とサポートライン(安値を結んだライン)を引きます。この時、最も安値となった地点が買いのエントリーポイントとなります。つまり、価格が下がった後に反発し、上昇を始めるタイミングが狙い目です。 - 下降ウォルフ波動の場合
上昇トレンド相場から三角持ち合いを探します。上昇ウォルフ波動と同じようにラインを引いた後、スイートゾーン内で価格が反発した点が売りのエントリーポイントになります。価格が上昇してから反転し、下降を始めるタイミングでエントリーを狙います。
これらの手法を活用することで、ウォルフ波動の特徴をしっかりと捉え、リスクを抑えつつ、エントリーポイントを見極めやすくなります!
ウォルフ波動の利確ポイント
ウォルフ波動の利確(利益確定)ポイントについて説明します。利確ポイントは、波動の①と④を結んだライン上に位置します。

具体的には、⑤でサポートラインを反発したチャートが、赤いラインにぶつかったタイミングが利確ポイントです。このタイミングで価格が赤いラインに達したら、利確を行いましょう。
リアルタイムでチャートを見ている環境であれば、価格がラインに到達した時点で手動で決済するのが理想的ですが、忙しい場合はそうもいきません。そのような場合には、事前にスキャルピングやデイトレードのような短期的な手法を利用することをおすすめします。
- スキャルピングは、数秒から数分程度の短時間で何度も売買を繰り返し、少しずつ利益を積み重ねる手法です。
- デイトレードは、当日中に取引を終え、利益を確定させる手法です。
ウォルフ波動を使うと、一般的なトレンドライン内でのエントリーや利確よりも、より大きな利益を狙える可能性が高くなります。特に、価格が最大限に伸びたポイントで利確を狙えるため、利幅を大きく取ることが可能です。忙しい方でも、スキャルピングやデイトレードを活用することで、効果的に利益を確保できるチャンスが広がります。
ウォルフ波動の損切りライン
最後にウォルフ波動の損切りラインについて説明します。
ウォルフ波動は、⑤より少しチャートが進んだ地点が損切りポイントとなり、そのまま損切りラインとなります。具体的な例は、以下の図を参照にしてみてください。

- 上昇トレンドの場合:安値の⑤を割り込んだ時点が損切りポイントとなります。上昇トレンドの中で安値の⑤が破られると、トレンドが転換する可能性があるため、損切りを行うべきタイミングです。
- 下降トレンドの場合:高値の⑤を超えて上昇ブレイクした場合が損切りポイントです。下降トレンドの中で高値の⑤を越えると、逆方向に相場が動き始める可能性があるため、損切りを決定します。
また、先ほどのスイートゾーンにも関連しますが、実際にはスイートゾーンのラインを割ったり超えたりした時に損切りを設定することも有効です。これにより、少し余裕を持ってリスクをコントロールできます。
注意点として、トレンドライン付近では特に価格の揺れが激しくなるため、ライン際ではダマシが発生することがあります。ダマシとは、売りや買いのサインが出た後、逆方向に動くことを指します。
このため、損切り設定には少し余裕を持つことが推奨されます。
ライン際でのチャートの動向をしっかり確認し、敏感に反応することで、ダマシを避け、より効果的に損切りラインを活用できます。
ウォルフ波動のメリット
ウォルフ波動を学んだものの、実際にどんなメリットがあるのかを理解しないと、うまく活用するのは難しいでしょう。ウォルフ波動を使う主なメリットを4つ紹介します。
エントリーと利確ポイントが明確
ウォルフ波動の最大のメリットは、エントリーと利確ポイントが明確に分かることです。FX取引では、エントリーと決済のタイミングを見極めるのが難しいですが、ウォルフ波動ではトレンド相場に合わせてラインを引くことで、チャート上の5つの重要なポイントを事前に特定できます。これにより、トレードの戦略が立てやすくなります。

⑤のポイントがエントリーポイントの狙い目となります。逆張り手法であるため、その後の反発が①と④のポイントに一致するタイミングで利確することで、大きな利益を狙うことができます。ただし、エントリーと利確のタイミングはあくまで目安であることを忘れずに、柔軟に対応することが重要です。
トレンドの天井・天底が予測できる
ウォルフ波動は、トレンドラインを活用した取引手法で、波動が成立することでトレンド転換のサインが見えてきます。そのため、ウォルフ波動のラインを使えば、天井や底値を予測しやすくなります。具体的には、波動のポイントが①から⑤まで事前に決まっているため、トレンドの転換点を予測しやすいという利点があります。
トレーダーとしては、できるだけ安い位置で買い、高い位置で売りたいものです。そのため、ウォルフ波動を参考にすることで、エントリーと利確のタイミングを予測しやすくなるのが大きなメリットです。
期待できる利益値幅が多い
ウォルフ波動はトレンド相場において有効な取引手法であり、レンジ相場よりも1回あたりに得られる値幅が大きくなるのが特徴です。天井や底値をエントリーポイントとして狙うことができ、大きな利幅を期待できます。
さらに、エントリーや利確のポイントが明確で、ウォルフ波動の兆候を一度見つけられれば、高確率で利益を上げることができるというメリットがあります。
しかし、ウォルフ波動はトレンドとは逆方向にエントリーする「逆張り手法」であるため、成功時の利益は大きい反面、失敗した場合のリスクも大きくなります。そのため、ウォルフ波動の兆候だけで判断せず、他の要素と組み合わせて慎重にトレードすることが大切です。
トレードスタイルや時間足を問わず使える
FXにはデイトレードやスキャルピングなど、取引にかかる時間によってさまざまなトレードスタイルがありますが、ウォルフ波動はこれらのスタイルに関係なく活用できます。短期足から長期足まで、どの時間軸でも同様に使えるため、どのトレーダーにとっても扱いやすい手法と言えます。
また、長い時間足で活用すれば、それだけ大きな値幅を狙えるのでおすすめです。しかし、リアルタイムでチャートを確認する時間がないと感じる方は、取引時間の短いトレードスタイルを選ぶと良いでしょう。
ウォルフ波動のデメリット
ウォルフ波動のメリットについてご紹介しましたが、取引を行う際にはメリットだけでなく、デメリットもしっかり考慮する必要があります。ここではウォルフ波動のデメリットについて触れ、初心者の方がよりスムーズに取引を行えるように解説していきます。
発生数が少ないため見つけるのが難しい
ウォルフ波動のデメリットの一つは、実際のFXチャート上で出現する回数が少なく、その発見が難しいことです。相場のトレンドの途中で出現しやすいものの、直近の高値や安値でチャネルラインを引いて出現を確認できる「フラッグ」などのチャートパターンと比べて、ウォルフ波動は形が複雑であり、判断が難しい点が難点です。
また、ウォルフ波動はトレンド相場でしか発生しませんが、FX市場におけるトレンド相場は全体の3割程度と少ないため、残りの7割はレンジ相場となります。そのため、ウォルフ波動を見つける機会は限られており、この手法を活用するにはFXの経験を積むことが重要です。
機能しないこともある
ウォルフ波動を活用してエントリーしても、トレンドが反転せずに継続することがあります。ウォルフ波動を参考にするのは有効ですが、100%トレンドが反転するわけではないことを理解しておくことが大切です。
また、ウォルフ波動で使用される逆張り手法はエントリーポイントの見極めが難しく、順張り手法と比べて予想が外れるリスクが高まります。もしウォルフ波動が機能しなかった場合には、迷わず損切りを行うことが重要です。損失が拡大する前に、早めの損切りを心掛けることが、損失を最小限に抑えるための鍵となります。
複数のインジケーターの併用がおすすめ
ウォルフ波動の兆候だけでは、リスクが大きく、利益を狙う確率が低いことがあります。そのため、複数のインジケーターと併用することで、トレードの成功率を高めることが可能です。
FX投資におけるインジケーターとは、チャート上またはチャート下に表示されるサポートツールで、トレードの意思決定を補助します。
例えば、RSI(相対力指数)やMACD(移動平均収束拡散法)などのオシレーター系指標は、売買のタイミングを判断する際に役立ちます。これらのインジケーターをウォルフ波動と組み合わせて使用することで、より確かな根拠をもとにトレードを行うことができるでしょう。
まとめ
今回はウォルフ波動について解説しました。
初心者にとって、FX取引でエントリーや決済ポイントを見つけるのは難しいですが、ウォルフ波動を活用することで、トレンド相場に合わせたラインを引くことでエントリーポイントや利確ポイントを明確にできます。
ウォルフ波動は、チャートの値動きを波動として捉え、その行方を予測することが特徴です。予測が可能な状態にある相場を見極めることで、上昇時には下方向へ、下降時には上方向へと逆張りを仕掛けることができます。ただし、ウォルフ波動の兆候だけに頼るのはリスクが高いため、複数のインジケーターを併用することで、トレードの成功率を向上させることをおすすめします。